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ブルベのライドレポートを書いていきます

2023 Paris-Brest-Paris レポート #3 走行編① ~ ランブイエ → サン・ニコラ・デュ・ペレム ~

 車検を終えてブルベカードにスタンプを貰い、スタート待機列に並ぶ。さあ、いよいよ1200 kmの旅路が幕を開ける。走行編①はスタートから2日目夜までの480 km。

 スタートまでの準備編はこちら。

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ランブイエ (17:50 0 km) → WP モルターニュ・オー・ペルシュ (22:10 120 km)

 17時45分、いよいよH組がスタート。アーチをくぐり、少し進むと時刻記録用のゲートが設置されている。ここを通過すると計測がスタートする。90時間後、再びここに戻ってくることを誓う。

 ランブイエ市街とはうってかわり、裏庭のような雰囲気の漂うランブイエの森を抜けていく。沿道には地元の方々が応援に来てくれており、グランツールでも走っているかのような錯覚に陥る。初めは飛ばしすぎないことがブルベの鉄則だが、これだけの歓待を受けると否応なくテンションが上がってしまう。

 しばらく走ると徐々にペースごとに集団が形成されてくる。離脱と合流を繰り返しつつ、10人ほどの集団を転々としながら走っていった。ランブイエの森を抜け、いくつかの街を通過していく。18時、19時でもまだまだ明るく、この付近では公式カメラマンによる撮影スポットもいくつかあった。ここで撮ってもらった写真はPBP終了後に購入できるので、ぜひアピールをすると良いと思う*1。途中、沿道から「頑張れー!」と声が聞こえ、アウェーの地で母国語で声援をもらえたことに感動した。

 途中一度、ドリンクボトルをケージに入れそこなって落としてしまったのだが、幸い後続車に当たるようなこともなく回収できた*2。さっきまでお世話になっていた集団からは落ちてしまったが、少しオーバーペース気味だったのでかえってよかったのかもしれない。

徐々に落ち着いてきた気温のなか、1200kmの旅路がスタートする

 15分前にスタートしたG組の人が見えてきたかと思うと、今度は逆に15分後にスタートしたI組の速い人たちが高速トレインで通過していく。装備も十人十色で、ディスクブレーキのカーボンロードから古式ゆかしきクロモリフレームまで様々だ。さらに進むと、特殊自転車枠のF組の人たちがちらほら見えてくる。仰向けのような姿勢で乗るリカンベント、車輪が3つあるトライク、そして2人で同乗するタンデムバイク。全身がすっぽり覆われるベロモービルは圧倒的に空気抵抗が少なく、道中の下りでは何度も爆速で抜かされた*3。こういうイベントでないとなかなかお目にかかれない。

 道中、anchorのフラッグシップモデル RS9に乗っている方もお見かけした。この方以外にも何人かanchor乗りの方をお見かけしたが、さすがに全員日本人だった。その他有名どころのメーカーのバイクはだいたい見かけたが、中でも国内に比べてscottに乗っている方が多かったのが印象的だった*4。逆にMERIDAに乗っている方はかなり少なかった。一番多かったのはやはりspecializedだろうか。TREKBianchiも多かった。BianchiBianchiでも、エンデュランスモデルのinfinitoをかなりの数見かけたのが驚きだった。フランスメーカーではLapierreが一番多く、次いでLOOK。TIMEは意外と見なかった。もっとも、これはあくまで私の観測範囲の話で、もっと速いグループはPinarelloやcerveloで溢れていた可能性もあるが。

市街地に入るとこんな感じ

 徐々に日が落ちていき、21時を過ぎてやっとあたりが暗くなってくる。一旦道端に避けて停車し、スタート時は暑くて着ていなかった公式反射ベストを着用した。前走者のテールライトが帯のように連なっていて壮観だ。郊外ではほとんど街灯がないが、この赤い光が道を指し示してくれるし、その詰まり具合で勾配の具合も推測できる。国内ブルベではなかなかできない体験だ。

 そうこうしているうちに1つ目のWP(Welcome Point)のある街、モルターニュ・オー・ペルシュに到着した。フランスの都市は歴史的に防衛に主眼をおいて形成されているため、どこも丘の上にある。それほどきつくはない坂を登りながらWPの施設を目指す。さて、3日後も同じ気持ちでこの坂を登れるだろうか。

最初のWPの街まで来た

 WPの手前ではスタッフの方が誘導をしてくれており、迷うことなく進むことができた。ここはPCではないため通過してもよいのだが、ここまで120 km信号停車もなくほぼ走りっぱなし、この後も80 km走りっぱなしなため、多くの人がここで休憩していた。特にPBP初参加の私としては、設備の把握という意味でも立ち寄る意義は大きい。

 まず自転車を駐輪スペースに立てかけ、持参したマリンシューズに履き替えてお手洗いに向かう。施設内には「WC」の看板がいくつも立っており迷うことはなかった。続いてドリンク補給。ミネラルウォーターを買うという選択肢もあるが、WP・PCには飲用の蛇口が設置されており、ここで水を補充することができる*5。最後に食料補給だが、建物内の食堂はここでは使わず、屋外の屋台のようなところでサンドイッチとコーラを購入した。サンドイッチのバゲットが固くて咀嚼に時間がかかってしまったが、30分弱でリスタートした。

モルターニュのWPの様子。野外フェスのようなDJが響き渡る

WP モルターニュ・オー・ペルシュ (22:30 120 km) → PC1 ヴィレンヌ・ラ・ジュエル (1:50 203 km)

 WP内での盛り上がりとはうってかわって、WPを出るとすぐに暗闇が広がる。他の参加者の後を追って出てくればよかったと少し後悔しつつ、暗順応しきっていない目でなんとか進んでいき、小集団に合流することができた。さっきのWPまではほとんど途切れることなく参加者が走っていたのだが、WPを出てからは集団と集団の間がすこし空いているような印象を受けた。道が真っ暗なのでみんなまとまって走りたいのだろうか? 集団から飛び出したりといった動きも少なかったように思う。

モルターニュを出るとすぐに真っ暗闇が始まる

 いわゆる集団走行でのローテーションほどしっかりしたものではないが、ペースメイクしたい人が前に出るなどしてそれとなく先頭交代しつつ走っていく。途中、規定で禁止されているはずの点滅式テールライトを使っている人がおり、しかもなかなかの光量だったため、かなり目にうるさかった。牽くふりをして前に出て事なきを得たが、点滅式が禁止されている理由がよく分かった*6

 少ししてアランソンという街に突入。ここは地図で見ても分かるほど大きな都市で、スタートから160 kmにして初の信号待ちが発生した。PBPで走るような交通量の少ない地域では、交差点はほとんどラウンドアバウトになっているのだが、大都市ではそれでは捌ききれないため、信号機が設置されている場合が多い。ここアランソンでもいくつか信号を見かけたが、深夜0時なので車はまったくいなかった。このときの集団は律儀な人が多かったようで、みんな信号を守っていた。

スタートから160 kmを過ぎ、やっと1つ目の信号に引っかかる

 アランソンの都市部を抜けると再び郊外の暗闇区間が始まる。途中単独落車している参加者を見かけた。声をかけると意識はありそうだったのでよかったが、明日は我が身と気を引き締めて先に進んだ。

 200 km地点、最初のPCであるヴィレンヌ・ラ・ジュエルに到着。ここは500 m近くある道路が丸々駐輪場となっていて、道路脇の少し階段を登ったところにある建物がPCになっている構造だった。到着は深夜2時で少し肌寒くなってきていたが、建物内は暖房が効いていた。コントロールでスタンプを貰い、食堂でクロワッサンなどを購入。まだPC1ではあるが1ブルベ分走っているため、食堂内で30分ほど仮眠した。

ヴィレンヌのPCは沿道にずらっとサイクルラックがあり、一段登ったところにコントロールや食堂があった

PC1 ヴィレンヌ・ラ・ジュエル (2:50 203 km) → PC2 フジェール (6:20 292 km)

 深夜3時、さすがに冷え込んできたのでレッグカバーを装備してリスタートする。90 km先の次のPCまではひたすら暗闇の中を走ることになりそうで、あまり気乗りしないな、などと考えていると、日本人参加者の方と運良く合流できた。眠気予防に一緒に走りませんかという話になり、ブルベ談義・自転車談義をしながら、かなりいいペースで走ることができた。夜間は景色が楽しめないため単純作業のようになってしまいがちなところ、こうして雑談しながら走れたのはとても助かった。

 この区間は途中どこかで休憩を入れることも考えていたのだが、放射冷却でどんどん気温が落ちてきており、路上では休憩できそうにない。いっそ次のフジェールまで行ってしまって、気温が上がるまで仮眠所で少し仮眠しようということになった。フジェールのPCはラザニアが美味しいらしい。お腹を満たしてから仮眠すれば、全回復すること間違いない。

 フジェール手前ではさらに数名の日本人参加者の方と合流し、日本人パックのようなものが形成されていた。その中のお一人は、最近ブルベ界隈でなぜか流行しているぶりのぬいぐるみをサドルバッグに載せており、ヘッドライトに照らされたその姿のインパクトがなかなかすごかった。

夜間&区間距離90 kmの難所だったが、日本人参加者の方と雑談しながら走ることができた

 防寒用のレインウェアを一枚残しているとはいえ、明け方はなかなか気温が下がり、裏起毛の長袖インナーだけでは少々厳しかった。西部に行くにつれ気温は下がる傾向にあるので、明日はもっと寒くなるだろう。

 フジェールのPCは斜面上に立地しており、登った先の一番高いところにコントロールと軽食、折り返して少し降りたところにレストランと仮眠所がある配置になっていた。コントロールでスタンプを貰い、雑魚寝をしているランドヌールたちを横目に軽食はパス、そのままレストランに直行した。

PCの床は初日から大盛況

 朝の6時ということもあってレストランはかなり空いていた。お目当てのラザニアに貴重なビタミン源であるトマト、チキンフィレにチーズケーキと、そこそこの量をとってしまった。チキンフィレは味付けが薄かったため持参した塩で味を調整。ラザニアは噂通りとても美味しかった。

フジェールのPCはラザニアが美味しい

 しっかりお腹を満たし、レストランを出るとちょうど空が白み始める時間帯だった。ここから気温が上がるには少し時間がかかるため、予定通り仮眠所で休憩する。フジェールの仮眠所は1時間半を境に利用料金が変わるシステムだったが、1時間も寝られれば十分ということで、起床時間は1時間後を選択。料金には掛け布団代わりのエマージェンシーシート代が含まれていたが、暖房が十分効いていたためそのまま寝ることができた。使わなかったエマージェンシーシートはこの先のためにありがたく頂戴した。

 PBPの仮眠所では申告した時間に起こしてくれない場合もあるというもっぱらの噂だったため、スマホで目覚ましをセットしておいたのだが、結局時間ぴったりにスタッフの人が起こしに来てくれた。マットだけの簡素な仮眠所だったが、数十人寝られそうな部屋の中で利用者は数名だったため、かなり快適な環境だった。たった1時間とはいえかなり疲労が回復したように思う。仮眠所を出るとレストランには長蛇の列ができており、早めに到着しておいて良かったと安堵する。PC1からここまで同行していた方は友人のヘルプに向かうとのことで、互いの健闘を祈りつつここでお別れすることとなった。

PC2 フジェール (8:40 292 km) → PC3 タンテニアック (11:20 353 km)

 すっかり日も昇って爽やかな朝。ここフジェールはお城で有名な大きな街で、今回は寄らなかったがルート上にマクドナルドやバーガーキングもあった。ヴァル・ナンソン庭園や聖レオナール教会など、時間があれば立ち寄ってみたかったが、往路はスケジュールがタイトなため泣く泣くパス。それにしても朝日に照らされた町並みは綺麗で、走っていて心地よかった。日が昇ってくると途端に暖かく、早くも反射ベストと長袖アンダー、レッグカバーを脱いでしまった。

朝のフジェールの町並みを抜けていく

 この区間は人もまばらで、単独走行することが多かった。昨日はスタート直後は集団走行、しばらくすると日が落ちてきたのでそれほどゆっくり景色を楽しむ時間がなかったのだが、こうして落ち着いて見渡してみるとやはり綺麗だ。少し小高くなった場所を通っていて、道路脇の茂みが途切れると斜面に沿って畑がずっと広がっている。道もまっすぐで、少し行った先に街が広がっていることが遠目に見えたりするほど。信号もないので、ただペダルを回しているだけで進んでいける。まだ序盤ということで脚も軽く、新鮮なブルターニュ地方の景色を楽しんでいたらあっという間にPC3のタンテニアックに到着した。

タンテニアックに到着。街の中心には必ず教会がある

 タンテニアックのPCは駐輪場、コントロール売店が比較的コンパクトにまとまっていたように思う。サンドイッチを買おうとしたら売り切れとのことだったので、代わりにコーラでエネルギー補給。普段コンビニや自販機に甘やかされている身としては、コーラがぬるかったのが少し残念だった。

PC3 タンテニアック (11:40 353 km) → WP ケディヤック (12:50 378 km)

 やや補給が不十分な気がしなくもないが、次の区間は距離が25 kmしかないためそそくさと退散。少しずつ上がってきた気温のなか、何もない直線道路をひたすらに進んでいく。北海道ブルベには参加したことはないが、こんな感じなのだろうか?

 少し進むとメドレアックという街に出る。特にPCやWPには指定されていないが、コースに面して立派な教会が建っているため、ちょっとしたフォトスポットになっていると聞いていた。実際に来てみると、なるほど確かにここは写真に収めたくなる。事前情報無しでも立ち止まりたくなるほど見事な建物だった。

372 km地点、メドレアックという街にある教会

 メドレアックからWPのケディヤックまではほんの6 kmほど。のんびり走っているとすぐにケディヤックの街に到着した。ここでは今回のPBPで唯一の踏切待ちが発生。ケディヤック駅がすぐ近くにあるようだ。こうして皆で踏切停車するのも、なんとなく非日常感があって楽しくなる。

珍しく踏切待ちが発生

 ケディヤックのWP入口には大きく「NO CONTROL」と書かれていたので、そのまま通過している人もいた。私は水分補給と、さっきのPCで食べそこなったバゲットサンドを食べるためにピットイン。無事ジャンボンブール(ハムとバターの入ったバゲットサンド)を購入できた。

WP ケディヤック (13:30 378 km) → PC4 ルデアック (16:10 437 km)

 さて、次はいよいよ一大拠点のルデアック。ここにはドロップバッグを置いているので、着替えついでにシャワーも浴びていくつもりだ。区間距離も60 kmほど。気温は少し上がってきたが、日本の酷暑に比べればどうということはない。ぱぱっと片付けてしまおう……と思ったのだが、WPを出てすぐの見通しの良い登りに出鼻をくじかれる。思えばこれがこの区間を象徴していたのかもしれない……。

 登りの斜度自体はそれほどきつくなく、ただ視覚的につらいタイプの登りだった。それほど苦もなくこなして進んでいくと、サン・メアン・ル・グランという街に出た。特徴的な建物と空にかかるフラッグが目立つ。例によって街の手前は登りになっているのだが、登りきった先にこういうお出迎えがあると少しは報われた気分になる。

388 km地点、サン・メアン・ル・グランの街並み

 街が終わるとすぐにだだっ広い牧場&畑が一面に広がる。牧場といっても柵などは特になく、手を伸ばせば触れそうな距離に牛たちがいる。ぽかぽか陽気のもと、まったりと牧草を食べたりしている牛たちの横を通り過ぎていく。のどかだ。

牧草を頬張る牛たちのすぐ横を走り抜けていく

 のどかなのは牛たちに限った話ではなく、コース脇の木陰ではランドヌールたちがまったりお昼寝していた。のどかすぎる。

日差しはきついが木陰は涼しく、絶好のお昼寝日和

 こんな雰囲気の中お散歩気分で走っていたのだが、さすがに疲労が出てきたようで、登りがしんどくなってきた。なんとなく上りに比べて下りが少ない気がする。ランブイエから離れるほどアップダウンが厳しいとは聞いていたが、これからさらに厳しくなるかと思うと気が重い。

 どうも登りのピークらしきところを過ぎたようで、下り基調に入ると今度は眠気が出てきた。時間にも余裕があるので、ちょうど良さそうな木陰を見つけて10分だけ仮眠することにした。寝過ごしは禁物なのでスマホで目覚ましをかけておく。スリッパを枕代わりにして原っぱに横になる。あぁ……最高だ。脇を通り過ぎていくランドヌールたちのロードノイズを聞きつつ、すぐ眠りに落ちた。10分後、目覚ましに起こされてリスタート。たった10分だったがかなり頭がスッキリした。PCでダラダラするぐらいなら、こういう場所でお昼寝したほうがよっぽど回復するように思う。ぜひおすすめしたい。

 とはいえアップダウンの険しさは緩むことなく、ルデアックの街に入ってからも微妙な登りにじわじわ体力を削られた。なんとかルデアックのPCに到着。フェンス越しの沿道からの声援が嬉しかった。坂を登って駐輪場にバイクを置き、まず西側の建物でスタンプをもらう。そのすぐ隣がレストランになっており、かなり消耗していたのでいろいろ取ってしまった。マッシュポテトを盛り付けてくれたおばちゃんがサービスで特盛にしてくれたのだが、いくら空腹とはいえさすがにキツかった。

一大拠点となるルデアック。画像奥にコントロールや食堂があり、右手側にシャワーと仮眠所がある。ドロップバッグは画像と逆側の屋内に保管されていた

おばちゃんが心からの善意で特盛にしてくれたマッシュポテト、さすがにお腹がきつかった

 一気にドカ食いしたので眠気が来た。幸い食堂はそれほど混雑していなかったので、机に突っ伏して仮眠。あまり時間効率は良くないだろうが、時間的にはまだまだ余裕があるので大丈夫だろう。

 30分ほど仮眠し、シャワーを浴びるためドロップバッグの回収に向かう。ドロップバッグは駐輪場の南東側、階段を降りた先にまとめて並べてあった。荷物番をしてくださっているグッディースポーツのスタッフの方にお礼を言いつつ、電子機器をモバイルバッテリーに接続。着替えとタオル、シャンプーを持ってシャワーに向かう。と、その前にお手洗い。係の人が毎度散水機で綺麗にしてくれるのは良いものの、便座がないタイプのトイレだった。どうせこのあとシャワーだからと思って座って使ったが、本当は空気椅子的な姿勢で使うのが正しいらしい。トイレットペーパーはちゃんと備え付けてあった。

 さて、シャワー受付で5ユーロを支払うと、バスタオル代わりにペラペラの布を1枚渡された。AJたまがわのスタッフさんに聞いた通り、バスタオルは持参して大正解だった。シャワーは天井に固定されているタイプでやや不便だったが、ちゃんと温水が出てきたので良かった。汗を流してさっぱり。ここからブレストまでの往復区間は夜間の気温低下が予想される区間なので、着替えができるこのタイミングでレーパンを冬用のタイツに履き替えておいた。上は夏用ジャージのままだが、春秋用長袖ジャージをサドルバッグの上にくくりつけて夜間に備える。

 ドロップバッグに歯ブラシセットを入れておいたので、ここで歯を磨いておく。荷物をまとめ、充電しておいた電子機器類を回収してバイクに戻る。シャワーを浴びたとはいえ、かなり時間が経ってしまった。

PC4 ルデアック (18:50 437 km) → Secret PC カニユエル (20:40 477 km)

 さて、次の目的地はWPのサン・ニコラ・デュ・ペレム。往路のみ通過するWPとなっており、おそらく往路のシークレットPCになっているはず。今日はここでしっかり仮眠を取る予定なので、本日ラストの一踏ん張りだ。気合を入れ直して走り出す。

 日も傾いて気温も落ち着いてきたなか、相変わらず微妙なアップダウンの繰り返しを淡々と走っていく。これを乗り切れば仮眠と分かっていると自然と脚も回る。街を外れると周囲は一面畑か牛や馬の放牧場。ここまで来ると牛との距離感にも特段驚かなくなってくる。

牛を眺めながら走る

 サン・ニコラまでの残り距離も半分を切ったあたりでコーナーを曲がると、グラベルとまでは言わないものの、砂が浮いているような道が出てきた。このルデアック~サン・ニコラの区間は今回のPBPで新しく組み込まれた区間らしく、先人たちからもこういう道を走らされるとは聞いていなかったので一瞬戸惑ったが、それが逆に面白かった。いや、まだ笑って許せる程度の路面だったから良かったのだが、もし予告なく砂利道や草地を通されたと想像すると……。幸い路面はそれ以上悪くなることはなかったのだが、その代わり登りは容赦なく襲いかかってきた。

 といってもそれほど長く続くものではなく、少しすると街が見えてきた。見るとスタッフの方が誘導している。あぁ、もうサン・ニコラに到着したのか、と思ったが、距離が合わない。garmin曰くサン・ニコラまでまだ7 kmあるという。ではここは……そう、正真正銘のシークレットPCだった。スタッフの誘導に従って駐輪場に自転車を停め、建物に入ってスタンプを貰った。無事往路のシークレットを回収できたことに安堵。実は出走前、シークレットPCを見落とさないかが不安で仕方なかったのだ。今回走ってみて分かったのは、ルートに従って走っていればまず間違いなく気付けるように設計されているということ。スタッフも配備されていたし、そもそもコースの形状からして一度駐輪場を通過しないと先へ進めないようになっている。また、普通に走っていれば周囲にランドヌールたちがいるため、人の流れからして「何かある」ことは察知できると思う。というわけで、てっきり次のWPと兼ねていると思いこんでいたシークレットPCは、ほんの7 km手前のここカニユエルという街に設置されていたのだった。通過時刻記録用のゲートもしっかり設置されていた。

カニユエルという街に新設されたシークレットPC。次のWP サンニコラまで7 kmしかない

Secret PC カニユエル (20:50 477 km) → WP サン・ニコラ・デュ・ペレム (21:00 484 km)

 無事シークレットPCのスタンプを貰い、今日は残すところ7 kmをこなすだけ。ちょうど空が綺麗な時間帯だった。

綺麗な空模様はどこの国でも心を癒やしてくれる

時刻は午後9時、傾きつつある太陽のもと走る

 ここまで走ってくれば7 kmなんてほんの少しの距離。道も下り基調で、あっという間にWPのサン・ニコラ・デュ・ペレムに到着した。細い入口を抜けた先の駐輪場にバイクを停め、一応チェーンオイルを差しておいた。就寝用具を持ち出しつつ、まずは夕食。ルデアックで食べた分がまだお腹に残っている感じがあったので、クロワッサン2つとコーラで簡単に済ませてしまった。隣の屋台からはBBQのいい匂いが漂っていたが、食べそこねてしまったのが少し心残り。

サンニコラのWPに到着。仮眠所は少し奥まったところにあり、案内係の人に連れて行ってもらった

 お腹も満たしたところで、まだ明るいが仮眠室で大休憩を取る。スタッフの方に仮眠所まで連れて行ってもらった。マット一枚のフジェールの仮眠室より設備は整っていて、体育館一面に一人用のコットが並べられていた。まだ明るいこともあってか先客は少なく、その点では快適だったのだが、なぜか暖房がガンガンに効いていて暑い。そのせいでかなり寝付きが悪かった。とはいえ冷え込みの激しい夜間に寒さをしのげるのはありがたいので、朝2時までの4時間強寝ることにした。

初利用する仮眠所。暖房が効きすぎていた

初日&2日目 走行記録

(17:49) ランブイエ
 ↓   120 km / 4h19m = 27.8 km/h
22:08 [WP] モルターニュ・オー・ペルシュ 滞在0h26m
 ↓   83 km / 3h17m = 25.2 km/h
01:51 [PC1] ヴィレンヌ・ラ・ジュエル 滞在1h00m
 ↓   90 km / 3h25m = 26.2 km/h
06:16 [PC2] フジェール 滞在2h24m
 ↓   61 km / 2h35m = 23.7 km/h
11:15 [PC3] タンテニアック 滞在0h28m
 ↓   25 km / 1h08m = 22.1 km/h
12:51 [WP] ケディヤック 滞在0h37m
 ↓   59 km / 2h34m = 22.8 km/h & 仮眠0h12m
16:14 [PC5] ルデアック 滞在2h40m
 ↓   47 km / 2h08m = 21.9 km/h
21:02 [WP] サン・ニコラ・デュ・ペレム

 

続きはこちら。

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*1:写真はゴール後2,3日で販売開始されたようだ。出走番号を画像認識して自動で振り分けられるため、フロントゼッケンを適切に取り付けることが重要

*2:今になって思うが、一歩間違えれば集団落車になりかねない。持ち物は落とさないように、また止まるときも後続に十分注意して止まりましょう。

*3:その代わり登りは大変そうだった。昼間の暑い時間帯にはキャノピー(?)を開けてクールダウンしている方も

*4:硬いと評判のfoilはさすがに見かけなかったが……

*5:体質にもよるかもしれないが、私の場合は特にここの水でお腹を壊すということはなかった

*6:この他にも反射ベストを着ていない人などもちらほら見かけた。パトロールのバイクが何台か走っていたが、特に止められている様子もなく……。