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ブルベのライドレポートを書いていきます

2023 R東京Flèche ~エントリー編~

 普段は完全にぼっちで走っている私にとって最も認定難易度の高いブルベ、Flèche。Twitter上でメンバー募集をかけてから無事全員での認定を得るまでを、記録として残しておこうと思う。

Flècheとは?

 通常行われるブルベはBRMというものに分類され、主催者が引いたルートを走行し、規定時間内にすべてのコントロールを回れば認定がなされるというもの。BRMにはグループで参加される方もいれば、私のように一人で参加する人も多く、様々な楽しみ方ができるのも魅力の一つである。一方で今回出走したFlèche(フレッシュ)もブルベの一つではあるのだが、その内容はBRMとは少々異なる。大きな違いとして、

  1. 3-5人で構成されるチームでの出走となること
  2. 目標フィニッシュ地点(ナイスプレイス)が設定されているものの、どこからスタートし、どのようなルートを通るかはある程度自由に決められること
  3. 認定条件として距離(360 km以上)よりも時間(24時間ぴったり)の制限が強いこと

がある。平たく言うと、「3-5人で協力しあい、24時間でナイスプレイスに向かってなるべく長い距離を走れ!」というブルベである。各国で1年に1回行われ、各地から出走したチームがナイスプレイスに集合することから、ランドヌール・ランドヌーズたちにとってのお祭り的な側面も強い。対面イベントも解禁されつつあるし、比較的予定に融通の効く今のうちに、経験としてFlècheを走っておこうと思い立ったのであった。

 さて、これまで400や600といったブルベを走ってきているランドヌールたちにとって、3の360 km / 24hという制限自体はさほど厳しいものではない。2のルート作成は人によるだろうが、筆者はストリートビューを探索しながらブルベの皮算用をするのが好きなタイプの人間なので、これもそれほど苦にはならない。問題は1のメンバー集めである。ブルベ3年目にしてランドヌール仲間のいない私にとってここが最大の鬼門であった。N2BRMが終わったと思えばシーズンオフと、なかなか脚の合うランドヌールと一緒に走れる機会がなく、そもそも自分から話しかける(ましてやFlècheに誘う / 入れてもらう)ほどのコミュ力もない。チームができなければ、出走することすらできない……。

 こうなればSNSの力を借りるしかない。twitterを通してメンバーを募集しエントリーしようと決めた。しかしただ単に「Flècheメンバーを募集します!」では興味を持ってもらえないだろうから、募集の前に大雑把にでもルートを決めておく必要があるだろう。そこでまずはルート作成から取り掛かることにした。

Flèche規定とルート作成

 まずどこの団体のFlècheにエントリーするかを決める必要がある。2023年はR東京さん(ナイスプレイス:石和温泉)、AR日本橋さん(代々木)、R熊本さん(熊本市東区)の3団体が主催しており、都内からのアクセスを考えるとR東京さん・AR日本橋さんの2択。家から近いのはAR日本橋さんの方だったが、都心の信号峠が不安だったこと、フィニッシュ後の温泉でモチベアップが狙えること、エントリー締切に若干ゆとりがあることから、R東京さんの方にエントリーすることにした。

 さて、ルートを引く前にまずFlècheの規定を確認しておく必要がある。

Fleche Japon 規定 | Audax Japan

一部抜粋すると、

7. コース

コースは各チームの自由選択にまかされる。Flecheの基本的な精神は全てのチームが同じ目的地に向かって走り、最後にどこか適当な場所(ナイス・プレイス)で落ち合うことである。コースは一方向へのルート(ストレート・ルート)が望ましい。往復ルートも認められるが、往路と復路で同じ道を使ってはならない

9. コントロール

主催者がコース中にコントロール・ポイントを設定するので、地図を参照し、地図上のコントロール・ポイント間の最短距離を実走行距離として採用すること。主催メンバーがいないコントロール無人コントロール)を設定することが出来る。

11. 認定条件

認定を受けるためには以下の条件を満たさなければいけない。

  1. 最低でも3台の車両がゴールすること。
  2. 全車両が同じ距離を走行すること。
  3. 22時間目から24時間目の間に、25km以上を走行すること。
  4. 360km以上であること。
  • チームリーダーまたはその代理人が、主催者指定の時間と集合場所に出向き、その場で記入済みのブルベカードを手渡すこと。
    認定の際に採用される距離はイベント当日に実際に走行した距離だが、あらかじめ登録した距離の±20%以内に含まれていなければいけない。

最後の行にある通り、エントリーの段階で予定ルートを提出していなければならず、この予定ルートには9の最短条件を満たすようにコントロールが配置されている必要がある。また、11.3を証明するためには22時間時点でどこにいたかを証明する必要があるが、そのためのコントロール(22時間PCとよぶことにする)も事前に申請しておく必要がある。

 ややこしいのは、これらはあくまで予定であって、実際に走行する分には予定よりも距離が伸び縮みしてもよいということである*1。つまり22時間PCやフィニッシュ地点は事前申請こそするが、必ずしも22時間・24時間時点でそこにいる必要はなく、最終的に走ったルートが11の条件を満たしていれば(そしてそれを証明できる証憑を取っていれば)よい。このあたりのことはAudax Japanのサイトに分かりやすいケーススタディが載っているので、一度読んでおくことを強くおすすめする。

Fleche Japon 規定について補足説明 | Audax Japan

 事前申請距離±20%かつ360 km以上が認定条件なので、450 kmで申請していれば仮に360 kmしか走れなくても認定はされるし*2、とてつもない追い風が吹いた場合でも最大540 kmまで認定される。したがってなるべく認定距離の伸びしろを確保しておきたい場合は450 kmで事前申請するのが得策だが、今回私自身がFlèche初参加であること、またメンバー同士も初対面であることを考えると、走れるだけ走るという方針よりは、明確に(温泉という)ゴールを決めて、そこに24時間でたどり着けるようペース配分をする、という方が安全だと考えた。そこでスタート地点は石和温泉から360 km地点の場所から選ぶことにした。

 安直には名古屋付近から御前崎を回って身延経由で甲府入りするルートになるだろう。平坦基調で厳しい登坂もなく、ドラフティングの恩恵を受けられそうなルートである。今思えば変な色気を出さずにこのルートにしていればよかったと思うのだが、もう少し冒険要素を入れたいと思ってしまったのがすべての始まりだった。

 富山走りたい__

 2022年のGWにR東京さんが主催したRM、日本列島縦断。桜島から佐多岬をタッチしてひたすら北上し、2700 km先の宗谷岬を目指すというものだが、その南半分・北半分だけを走るRM1350も同時開催されていた。私がエントリーしたのは南半分だけの方で、初のRM、初の1000 kmオーバーということで非常に思い出に残っている。そのゴール地点がちょうど富山だったのだ。

m24kmc.hatenablog.com

 富山から日本海沿いに新潟入りして上越から南下、野辺山を越えて石和温泉まで降りてくれば距離はだいたい330 km。あとは細かいPC配置で距離を伸ばして、364.1 km / 3085 m upのルートが完成した。スタートはもちろん、RM1350のフィニッシュ地点だったローソンだ。

富山から石和温泉へ!

メンバー募集

 かくしてルート案が完成し、意を決して募集ツイートを投稿。年の瀬のことだった。

 ネット上で募集、当日顔合わせをして、文字通り丸一日を共に過ごす……エクストリームオフ会とでも言うべきこの企画、人は集まるのだろうか。念のため400 kmの認定を条件に加えはしたが、初対面のメンバー同士で最後まで走りきれるのだろうか。不安はありながらも、FF内外の方からもRTしてもらえて、少しずつインプレッションが伸びていった。

 年が明け、R東京さんのエントリー締切の1週間前までに3人の方から連絡をもらった。どの方も文面が丁寧で、このメンバーとなら完走できそうだと期待が高まる。この後は以下のような順で手続きを進めていった。

  1. R東京さんのホームページよりエントリー ・・・ 1/21〆
    • リーダーの連絡先と暫定のメンバー・コース・チーム名を提出
  2. twitterのDMグループを作成
    • エントリー情報のやり取り、ルートの相談、参加費徴収
  3. R東京さん本申込 ・・・ 2/10〆
    • 参加費入金、全員分のエントリー情報*3、PC一覧と各PC間最短経路(申請最短ルート)、予定実走ルートを提出(※後述)
  4. (必要な場合)ルート修正、メンバー変更 ・・・ 3/9〆

申請最短ルートと予定実走ルート

 先にも述べた通り、事前申請はPC間の最短経路*4申請最短ルート)で行い、距離が絡む認定条件(総距離360 km以上、22-24時間で25 km以上)はこの申請最短ルートに基づいて判定される。一方で実際に走行する場合には必ずしも最短ルートを通る必要はなく、交通状況等によって迂回することが認められている(Fleche Japon 規定について補足説明 | Audax Japan p.10)*5。そのため、PCを最短で結んだ際にとんでもない道(林道、幹線道路、激坂等)を通された場合には、次のような対処法が考えられる:

  1. 素直に難所を避けるようにPCを追加する
  2. 申請最短ルートは難所含みのルートとしておき、実際にはそれを迂回するルートを走る

2の方法の場合、実際に走行する距離は迂回の分だけ360 kmから伸びる。なるべく最短で認定を取りたい今回のような場合は、1のようにPCを追加したほうが距離的な負担は減る。一方で、やたらとPCを増やしすぎてしまうとルートの柔軟性が失われ、レシート紛失などミスの温床にもなる。今回はPCは重要箇所にだけ設置し、迂回による距離の増分がわずかなところは迂回前提で申請最短ルートを引く、という方針とした。

 R東京さんの場合(に限るのか定かではないが)、この迂回後のルートもあわせて提出する必要があった。これをここでは予定実走ルートとよんでいる。

ルート修正

 長野県千曲市にある、棚田で有名な姨捨。今回のルートでは距離調整のため、またもしかすると綺麗な景色が拝めるかもという期待も込めてここを通る予定にしていた*6。当初JR姨捨駅をPCとしていたのだが、R東京さんに精査していただいたところ、この前後で申請最短ルートに重複があるとの指摘を受けた。

申請最短ルートの修正箇所の拡大図。JR姨捨駅をPCとしてしまうと、そのアプローチ区間でルート重複が生じる。そこで駅南東に位置するバス停「大池」をPCに設定することで重複区間をなくした。

 重複区間は僅かなので少しPCをずらせばよいのだが、自転車navitimeで経路を提出する都合上、そこに地点として登録されている必要があり、そういったランドマークがなかなか見つからない。しかしよくよく地図を見てみると、ちょうど重複区間から外れたところに千曲市コミュニティバスの停留所「大池」を発見。ストリートビューでフォトチェックに使えそうであることを確認し、ここを改めてPCとおくと連絡。無事承認され、ひとまずエントリー手続きは完了したのであった。

 続きはこちら。

m24kmc.hatenablog.com

*1:事前申請したルートやPCをハナから完全無視して走ることが認められるのかは定かでないが、当然推奨されない。仮に証憑が揃っていたとしても、確認作業をするスタッフの大変な負担になる。

*2:それ以下だった場合はそもそも申請距離に関わらず認定されない

*3:普段のBRMと同じく、住所や緊急時連絡先、保険の加入状況などを提出

*4:R東京さんでは最短経路の確認に自転車navitimeを使用していた

*5:これによって走行距離が伸びた分が認定距離に反映されるかどうかは場合によると思われる。今回は数ヶ所迂回をしたものの、ゴールPCが申請通りだったため、申請最短ルートの距離での認定となった。

*6:棚田ができるということは当然斜面になっているわけで、わざわざそんなところで距離調整するなと今になって思う。というか走行中も思っていた。