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ブルベのライドレポートを書いていきます

2023 Paris-Brest-Paris レポート #6 帰国編

 時刻は朝の9時。異国での1200 kmブルベを終え、気づけば芝生の上で寝てしまっていた。

 フィニッシュ前はこちら。

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フィニッシュ後

 ゴールゲート脇に設営された駐輪場に入り、ここまでノートラブルで走り切ってくれた愛車にねぎらいの言葉をかけつつラックに預ける。すっかり緊張も解けて危うく忘れそうになっていたが、まだブルベカードに最後のスタンプを貰わなければいけないのだった。テントに入り、ブルベカードを提出。スタンプが全て揃っていることを確認されたのち、記念メダルを授与された。受け取ったメダルをしげしげと眺め、受付のお兄さんに「Congratulations!」と言われてやっと、PBPを完走したことに実感が湧いてきた。

 この時まで知らなかったのだが、ゴール後に食事が振る舞われるサービスがあるらしく、メダルとともにチケットが配布された。早速隣接する食堂に向かい、ありがたく使わせてもらった。思えば昨晩のモルターニュ以降ほぼ無補給で100 km以上走ってきたため、相当お腹も空いていた。本能の赴くままに食べていると、昨晩一緒に走ったさぶさんと遭遇。一緒にテーブルを囲んだ。デザートにはパリ・ブレストが振る舞われ、今回の旅路の良い締めくくりになった。

フィニッシュ後にも食事が用意されていた。デザートはパリブレスト

 さすがにお腹が空いていただけあってあっという間に食べ終わった。今度は眠気がやってきて、ついついウトウトしていたが、徐々に食堂にも人が増え始めてきたので退散。まだ朝の9時ということで広場も空いていたため、"あの男"に連絡を入れ、木陰で寝ることにした。

 1時間ほど経っただろうか。ブルベ後特有の墜ちるような入眠でぐっすり眠り込んでしまった。目を開けると、目線の先には"あの男"こときんちゃんさんの姿が。お互いの健闘を称え合い、そして日本から応援してくれていたFlecheメンバーにも無事完走の連絡を入れる。前半は胃腸トラブルに悩まされたと話していたきんちゃんさんだったが、後半はすっかり回復し、観光も満喫しながら走れたとのこと。今回はPCクローズの時間的にも、前半で貯金を作って後半をのんびり楽しみながら、という走り方の人が(私含め)多かったようだ。

 もう少しお互いの旅道中を語り合いたいところだったが、ポツポツと雨が振り始めてきたため、雨脚が強まる前にホテルに戻ることにした。きんちゃんさんは後泊のホテルを取っていないそうで、ゴールに設けられた参加者用の仮眠施設で一夜を明かしたらしい。さすがドイツから自走してきた人間はやることが違う。

ホテルに帰還

 なんとか本降りの雨には当たらずにホテルに帰還できた。チェックイン時刻まで小一時間あったため入口の近くで時間を潰していたところ、韓国から参加されているベテランランドヌールの方がタクシーを待っていらっしゃったので、少しお話することに。PBPはこれまでも参加してきたそうだが、その中でも今回はきつかったと言っていた。天候には恵まれたと思うのだが、やはりコースプロファイルのことだろうか。確かにブレスト~ルデアックあたりは厳しかった。

 タクシーに乗り込むのを見届け、そうこうしているうちにフロントも開いたので、再度ホテルにチェックイン。預かってもらっていた輪行箱も無事回収できた。シャワーを浴びてさっぱりし、このまま寝てしまいそうなところだったが、まだドロップバッグの回収というミッションが残っている。返却場所はなぜか預け入れ場所と違う場所に指定されていたため、電車でサンカンタン・アン・イヴリーヌに向かう。さすがに疲れていたため幾度も意識を飛ばしかけたが、なんとか乗り過ごさずに済んだ。駅からは徒歩で返却場所まで向かい、無事荷物を回収。日本人ランドヌールの方が集結しており、道中お世話になったbaruさんにも再度お会いできた。ご夫婦揃って無事完走されたとのこと、おめでとうございます。

 重い荷物を背負ってホテルまで戻ってきた。一度荷物を部屋に置き、ホテル裏のスーパーで今日の夜食&明日の昼食を買い込む。さて、これで一通り仕事も片付いたので、ホテル併設のレストラン*1に向かう。今日はレストランがオープンしているとの情報をチェックイン時にフロントで聞きつけ、密かに楽しみにしていたのだった。今日ばかりは多少の贅沢も許されるだろうということで、値段には目をつぶり、PBP完走を祝してディナーをいただくことにした。

無事完走を祝してホテルで贅沢ディナー

 おしゃれなサーモンマリネに豪快なステーキ、デザートにシャーベットまで付いてくる。5日ぶりのまともな食事がいきなりこれで大丈夫か?と心配になるほど贅沢なお料理を心ゆくまで堪能し、すっかりHPもMPも全回復した。

 部屋に戻り、すぐにでも寝てしまいたいところではあったが、明日バタバタしないためにも飛行機輪行の準備をしておく。ホイール、RD、ステム、クランクを外してそれぞれ養生、プラダ輪行箱に詰め込んで、空きスペースに衣類などを詰めておく。さすがに2回目で勝手が分かっていたため手早く進められた。そうこうしているうちに時刻は12時を過ぎ、残りは明日に回して寝ることにした。久々の温かい布団での就寝だ。本当に、ブルベ後の布団ほど気持ち良いものはない。またも”墜ちる”ような感覚で眠りについた。

フィニッシュ翌日: チェックアウト、帰国

 本当なら12時間ぐらい寝ていたかったところだが、朝食をとりそこねる訳にはいかない。9時頃に起床して朝食会場に向かい、この朝食バイキングとも今日でお別れかと若干の寂しさを感じつつ、相変わらず野菜不足の朝食プレートでお腹を満たした。

野菜のない朝食バイキングもこれで最後

 昨日あらかた整えておいた自転車周りに加え、着替えや生活用品等も整理して鞄に詰め込む。往路で利用したG7タクシーはサイトが繋がりにくかったので、Uberで空港までのタクシーを予約。指定時刻にちゃんとホテル前まで来てくれた。ホテルのチェックアウトを済ませ、荷物を後部座席に押し込んで出発。すぐに寝てしまい、気がつくと空港に到着していた。

 空港についたのは12時頃だっただろうか。フライトは19時発だったのでかなり時間を持て余したが、輪行箱もあるため身動きが取れない。結局ベンチに腰掛けて、フランス滞在中に溜まりに溜まったメールのチェックなどをして時間を潰した。しばらくしてチェックインカウンターが開き、ようやく輪行箱を預け入れて身軽に。やはり帰りの便も多くの日本人参加者の方が乗り込むようだ。

 無事保安検査をパスし、ゲート内の免税店でお土産を購入。さっきメールチェックをしたせいですっかり気分が現実モードに引き戻されてしまい、帰国後の予定などをあれこれ考えていたらあっという間に搭乗案内の時間になった。

 機内はやはりPBP帰りの方が多く、公式ジャージを着ていらっしゃる方もちらほらお見かけした。はるばる日本からフランスの地を走りに来た同士の方々。走ったコースは同じでも、一人ひとりが見てきた景色はきっと違うのだろうと想像する。ブルベは必ずしも計画どおりに進むものではなく、中には夢破れて撤退を余儀なくされた方もいらっしゃるはず。それでも、SRを取得してPBPの舞台に立ったランドヌール・ランドヌーズの方であれば、きっとまたどこかのブルベを走りたいと考えてしまっているのではないだろうか。ある人は景色やグルメを楽しむため、ある人は他の人との交流を深めるため、またある人は自身の限界に挑戦するため。目的は人それぞれあれど、その誰もが同じルートを、自らの脚で駆け抜けるブルベというイベントに、私はこれからも魅了され続けるのだろう。

遥か上空から見下ろすイスタンブールの夜景

*1:例によって改装途中なのだが