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2025/06/29 SR600 Große Glockner Rundfahrt ライドレポート #3 走行編②

 SR600 Große Glockner Rundfahrt、2日目はZeller湖から。当初250km先のVipitenoという街の宿まで行く予定だったが、ペース低下と夕立による足止めにより計画変更を余儀なくされた。

 初日はこちら。

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宿出発(4:40 / 206 km)

 4時の目覚ましで起床し、さっと身支度を整えてチェックアウト。若干の肌寒さを感じたので裏起毛のアンダーを着て出発したが、走っているうちに徐々に体温が上がってきた。

日の出前の湖畔道を進む

 Zeller湖畔をぐるっと回って元のコースに復帰し、グロースグロックナーを目指して南下する。道中、同じく頂上を目指すと思しきグラベルバイクの2人組を見かけたので、付かず離れずの距離で同行させてもらった。

振り返ると空が朝焼けに染まってきていた

 料金所が近づくにつれて徐々に勾配が上がってくる。気温も体温も上がってきたので、アンダーを脱いでサドルバッグに突っ込み、ロングクライムに向けて気合を入れる。

料金所を抜けるといよいよ標高2500mへのロングクライムが始まる

 自転車マークに沿って進むと自転車専用ゲートに案内され、ゲート前のボタンを押すことで進入可能になる。結局ゲートを通過したのは6時過ぎで、開門時間からは30分ほど遅くなってしまったが、まだまだ交通量は少なく走りやすい時間帯に登り始めることができた。

 ここから頂上までは15km。後半のペース低下も考えると2時間はかかるだろう。自分の2時間ベストパワーが150Wなので、ひとまずそれを上回らないようにペースを抑えて登っていく。基本的に斜度は10%一定で、カーブの前後では局所的に12%程度まで上がるかといった感じ。そういったところを序盤はダンシングでこなしていけたのだが、徐々にそんな余裕もなくなってくる。

ひたすらに歩みを進める

 そもそも10%の勾配を150W以下で登ろうとするとまったく速度が出ない。ログを確認してみると、この区間の平均速度は7km/h、平均ケイデンスは45rpmで、明らかにギアが足りていない。前後とも軽いギアへの換装を本気で検討し始めた瞬間だった。

隣の山肌が陽の光を浴びてくる

 日が昇ってきて周囲の山肌が朝日に照らされていく。尾根の西側に位置する山岳道路はしばらく日陰のままだったが、むしろその方が涼しくてちょうどよい。似たようなペースで登っているおっちゃんと一緒に息を切らせながら走っていたが、おっちゃんは途中で休憩を入れるようで離脱していった。

 今回のロングクライム、私も途中どこかで休憩を挟んだほうがよいだろうかと考えていたのだが、一度心拍や体温が下がってしまうと元のペースに戻すのが難しいような気がして、脚を止めることができなかった。休んだとてこの苦しみが軽減されるような気もしなかった。しかし連続10%の登坂に露骨に脚は削れてきており、150Wはおろか120Wをキープするのすら難しくなってくる。心拍が上がりきっているわけでもないのに力が入らない。標高が上がって酸素が薄くなってきているらしい。

これから登る先が目に入ってくる

 木々もまばらになり視界が開けてくるにつれ、これからどこまで登らなければならないかが視覚的に明らかになってきて精神的につらい。

だいぶ登ってきた

 ヘアピンの先端からふと目をやると、さっきまでとは段違いに遠くまで見通すことができ、かなり高くまで登ってきたことを実感する。

 頂上が近づくにつれ尾根線が近づいてきて、やっと陽の光が当たるようになってきた。頂上までは残り2km。ここからコースはグロースグロックナー山岳道路を一旦外れ、最高地点エーデルワイスシュピッツェに向かう脇道へと逸れる。

視界がひらけてきた

 この脇道、事前のコース資料にも記載があったが、すべて石畳になっている。斜度も心なしかさらに上がったように感じられ、ここまで1500m以上登ってきた脚がもう回らなくなってくる。

ラスト2kmの石畳でさらに斜度が上がり追い打ちをかける

 視界のはるか上方に頂上の展望台が見えたとき心が折れた。クリートを外して路肩に寄り、あえなく押し歩きを開始するが、押し歩きですらしんどい路面。これはギア比やタイヤ幅云々でどうにかなる問題ではない。ダラダラと頂上を目指し歩く。

K6 Edelweißspitze(8:30 / 242 km)

最高地点エーデルワイスシュピッツェに到達

 最後の最後に押し歩きになってしまったのが悔やまれるが、なんとか頂上に到達した。これが標高2571mの空気。フォトチェックを済ませて展望台に駆け上がると、文字通り360度のパノラマが広がっていた。

これから進む道がずっと続いていくのが見える

 どこまでも続くアルプスの山々。その合間を縫うように続いていく道こそ、これから走っていくルートだ。しばらく頂上のベンチでのんびりした後、登ってきた石畳を降り返して先へと進む。グロースグロックナー山岳道路としての最高地点はもう少し進んだ先にあり、そこへの登り返しがまだ残っている。

一番左がオーストリア最高峰のグロースグロックナー山

 途中、グロースグロックナー山頂が見えるフォトスポットがあった。完全に観光モードに入ってしまったので、躊躇なくバイクを降りて撮影に興じる。

ひたすら山々が続く

 頂上手前のつづら折れ区間では壮大な景色を楽しむことができた。今回、平日のかなり早目の時間に来たということもあって、車はほとんどおらず、非常に快適に走ることができたのが良かった。

 頂上を過ぎるとトンネルがいくつかあり、そこから一気に下界まで滑降していく。このダウンヒルの最高に気持いいこと! どこまでも続く青と緑のコントラストの中、長い長い直線を一気に駆け下りていく。路面も綺麗、道幅も十分で交通量も少なく、この最高の景色を独り占めできる幸せ。2時間かけて登ってきた標高を、体感ではほんの数秒で消化してしまったように感じられた。

登りは永遠、下りは一瞬

 反対側の料金所を抜けてグロースグロックナー山岳道路は終了。もう少し進んだ先にスーパーがあることをメモしていたので、枯渇した糖分をチョコワッフルとコーラで補給した。持参していた日焼け止めが尽きかけていたので、ついでにNIVEAの日焼け止めも購入。今日も暑くなりそうだ。

渓谷に降りてきた

 急勾配区間を降りきった後もしばらく緩斜面の下りが続く。さっきまで走っていた山々から来たと思しき小川が流れており、その川沿いに進んでいく区間はまさに心に思い描く夏の風景そのものだった。

川沿いに進んでいく

どこまでも続く原っぱ

 日差しは少々強いが、日陰に入れば気温自体は30℃ちょっとで過ごしやすい。これでもかというほど夏を堪能しながら走り、300m upほどのちょっとした登坂をこなすと、Lienzという大きめの街に突入した。マクドナルドがあることを事前にチェックしてあったので、ここで一旦休憩を挟むことにした。超級山岳を越えて初めての大きな街ということもあり、さながら都内から柳沢峠を越えて甲府に降り立ったときのような感覚を覚えた。暑さと登坂の疲労で若干油がきつくなっていたので、私にしては珍しくポテトをサラダに変更。バルサミコドレッシングの酸味が疲れた体に染み渡った。

昼食休憩@Lienz(13:00, 300km)

 持参していたグローブが春秋用でさすがに暑かったため、食後に隣のスポーツ用品店に立ち寄って夏用フルフィンガーグローブを購入してからリスタート。しばらくは街中を抜けていく。この時期のヨーロッパの市街地は色とりどりの花が咲いており、見ていて飽きない。オーストリアに入ってからは特に、青紫の綺麗な花をよく見かけるようになったのを覚えている。チコリというらしい。

オーストリアではチコリという花が咲いているのをよく見かけた

夏を感じさせるトウモロコシ畑

 しばらく夏全開の景色の中を駆け抜けていく。さっきの超級山岳でもう今日は仕事を終えたような気になってしまうが、ここから再び標高2000mを目指す上り坂が始まる。気が重いなぁと思いながら走っていると、次第に空に雲が増えてきて、なおのこと気分が下がってくる。この先はまず平均3%程度の緩斜面で登り口を目指し、そこから6% 7km 500m upという2段坂構成。グロースグロックナーでかなり脚を使ってしまったためペースは全く上がらないが、のろのろと進んでいく。

文字通り雲行きが怪しくなってきた

 途中珍しく現れたスーパーで、日本では見なくなって久しいゲータレードを購入。ボトルの水も補充し、この先補給地点が少なくなっていくのに備えてM&M'sも購入しておいた。サドルバッグに入れたHARIBOと合わせれば、少なくとも当分の間ハンガーノックにはならないだろう。

 店の前でこの後の行程を確認する。現在時刻は16時半、予約していたホテルは120km先で、次の上りのあとにもまだ細かい上りがいくつか待ち構えていることを考えると、少なくともホームページ記載の最終チェックイン時刻の23時には間に合わなさそうなので、その旨を連絡しておく。ところでこのホテル、事前に予約サイトを通じて深夜のチェックインが可能か問い合わせていたのだが、一向に返事が帰ってこなかった。今回のメッセージもちゃんと読まれるのか不明だが、一応間に合わないとだけは伝えておいた。支払いは予約サイト経由なので問題ないはず。厚くなる雲の下再度走り出した。

 2段坂の前半パートが終わったところで、本格的に無補給地帯が始まる前に腹ごしらえをしておくことにした。St. Jakobという小さな町だったが、レストランがやっていたので、チーズトーストとコーラを注文。待っている間にさっきのメッセージのレスポンスが返ってきているか確認するが、当然そんなはずもなかった。トーストを平らげて店を後にしたところで電話もかけてみたが、繋がる気配もなかった。このホテル大丈夫か。

無補給地帯に備える

 ちょうどリスタートするあたりでぽつぽつと降り始めた。これから日が落ちるというところで完全水没は免れたいので、上下レインウェアを着込んで進軍を開始するが、雨脚はどんどん強まり、さっきから遠くで轟いていた雷鳴も心なしか近づいてきているような気がした。これから山越えというところでこの天気はつらい。

 この先のStaller Sattelは毎時1-15分のみ通行できる対面通行区間だが、このままのペースならギリギリ滑り込めるかどうかというところ。このまま強行突破するか? それとも引き返すか? 悩んでいるうちにも雷鳴は近づいてくる。とりあえず一旦停止して雨雲レーダーをチェックすると、紫色の降水帯が近づいてくるのが見え、一旦撤退することを決意した。何kmか登ってきてしまったが仕方ない。

 登ってきた道を降り返す内にも雨脚が強まってくる。さっきのレストランの街まで戻るのは遠すぎるが、この峠の登り口の小さな町にはロッジのようなものがあった気がする。軒先にでも入れてもらおうとダッシュで駆け下り、目についた建物の軒先に急いで避難する。ちょうどのタイミングで中からお父さんが外の様子を見に出て来たので、少しの間ここで雨宿りをしていいかと尋ねると、快くOKしてくれた。助かった。

雨宿り(19:00 / 364 km)

 雨雲レーダーを見る限り小一時間は降り続きそうだ。このまま雨宿りしてやり過ごしてもよいが、返事をよこさないホテルの代わりにここで一泊するという案も脳裏をよぎる。幸いこの近辺に2件ほどゲストハウスはあるらしい。しかし残りの行程から計算すると、ここに居られるのは長くて3時間。それだけの休憩で残り250kmを走り通せるか? 宿代も安くない。

 そんなことを考えながらgoogle mapを眺めていると、今いるここがまさにゲストハウスであることが発覚。さっきのお父さんはどこかへ行っていたが、窓から別の人の影が見えたので、ノックして相談してみることにした。ひとまず部屋は空いているかを聞いてみると、空室有りで一泊90ユーロとのこと。さてどうするか、と悩んでいたところ、「すぐ降り止むと思うから、バーで休憩していく?」と提案してもらえたので、お言葉に甘えてバーに入れてもらうことにした。英語が通じるのがありがたい。この方、さっきのお父さんと二人でゲストハウスを切り盛りしているようだった。

命のホットチョコレートとアプフェルシュトルーデル

 こういうときの人の温かさは本当に心に沁みる。ケーキもあるというので、ホットチョコレートとアプフェルシュトゥルーデルをいただくことにした。これほどまでに心落ち着くホットチョコレートは初めてだ。シューズのBOAを緩め、一旦気持ちを落ち着けることにした。

 

SR-DE-GR

Day2 Zeller See - Erlsbach

157.5 km, 3467 m up

14h20m, avg. 11.0 km/h

 

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